「もう『いい人』になるのはやめなさい!」 レビュー

 

目次

頭にくる一言を言われたらどうしますか?

 

 

もう「いい人」になるのはやめなさい!

潮凪 洋介 KADOKAWA/中経出版 2010-10-29
売り上げランキング : 203324

by ヨメレバ

 

 

本屋でタイトルを見て、「あ、これは自分のことだ」と思いました。自分の思いとピッタリと符合するようなタイトルに思わず手に取り、パラパラと目を通してみると、そこにはタイトル以上にさらに私を惹きつけることが書いてあったのです。

 

『他人にイヤなことを言われて頭に来ても何も言い返せないような人たちを救いたい』

(意訳です)

 

――驚きました。こんなことを考えてくれる人がいるのかと。こんなことを考えて本にしてくれる人がいるのかと。

 

恥ずかしながら私は完全にそのタイプなのです。『他人にイヤなことを言われて頭に来ても何も言い返せないような人』なのです。自分でもずっとそうだと思っていましたが、こうして活字にされてみると、そのことがくっきりと彫りだされてくるようでした。

 

こんなこと、分からない人には何のことだかまるで分からないでしょうから簡単に説明してみます。

 

例えば、誰かからトゲのあることを言われたとします。腹の立つことを言われたとします。ここですぐに言い返せる人もいるでしょう。反応よく、即座に打ち返すことのできる人もいるでしょう。

 

でも私は違います。その瞬間、あれっ?と思うのですが――あれっ?というのは、つまり、今の発言は何?ひょっとしてこの人イヤなこと言った?ムカツクこと言った…?と、やや反応の鈍い脳がそれを理解するのに一呼吸遅れるから、だと思います。だからこそ――その場では何も言い返せません。瞬間的に言葉が出てこないのです(本来そこで言い返すべき言葉をこの本の中では『迎撃フレーズ』と呼んでいます)。そして意味もなく曖昧な笑いを浮かべたり、「ああ」とか「ええ」とか不必要な相槌を打ったりした挙句、ようやくことの成り行きに気づき、怒りの気持ちが沸いてくるのです。

 

でももう遅い。その一言を発した相手は他の話題に移っています。あるいはもうどこかへ行ってしまっている。他人の心に(この場合は私です)グサリと言葉を突き刺しておきながら知らんぷりです。

 

私はそうはいきません。いったん突き刺さった言葉は簡単には抜けないのです。喉にささった魚の小骨のようにいつまでもそこにあります。時間とともにますます強く、大きく、痛く感じるようになります。時間がたてばたつほどムカムカとした思いが沸騰してくるのです。

 

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言われたことの内容に腹を立てているというのはもちろんですが、でも実際この怒りの根が深いのはそればかりではないのです。もっと別のところに怒りの真の理由が隠れているからです。それは、

 

何も言い返せなかった自分に腹を立てている

 

ということなのです。

 

あんなにイヤなことを言われたのに自分は何も言い返せなかった。あんなに腹の立つことを言われたのにただ黙ってしまっただけだった。あるいは自分が言ったことに対してあからさまに否定してきたのに――それも大した理由もなく――それに対して何も言えずに流してしまった。

 

あっちのほうが悪いはずなのにこっちが傷つけられてしまった―――

 

そうなるともう大変です。その思いに1日中とらわれることになります。仕事をしていても、食事をしていても、何をしていても、相手の言ったことが頭から離れません。忘れられません。時間がたてばたつほど、その怒りは強烈なものになってくるのです。

 

それだけではありません。頭の中で、今度は自分が言い返すシーンを何度も再現するのです。

 

『あ?ウルセーんだよ、オメーは』

『オメーが間違ってるんだろ?いちいちオレの言うことを否定すんじゃねーよ』

『このバカがっ!』

 

…キタナイ言葉ばかりで申し訳ないですが、こんなセリフがバージョンを変えていくつもいくつも出てきます。要は、頭の中でその相手をやり込めるのです。バカバカしいですよね?でも、そうしないではいられないのです。

 

でもこんなことをしたって怒りが静まるわけではありません。いや、こんなことをすればするほど怒りの気持ちはますます強くなってきます。1日では済まず、夜寝る時まで、もっと言えば夜中に目が覚めたときですらも、とらわれることがあります。

 

しかも自分がこんなに苦しんでいるのに、言ったほうの相手は今頃そんなことちっとも考えていないと思うと、理不尽でしょうがなく、ぶつけるところのない怒りはずっとたぎり続けるのです。そして一人消耗していく。

 

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本当に損な性格だと思います。どうして自分はこうなんだろう?どうしていつもこんなことになるんだろう?ほとほと自分がイヤになることがあります。

 

でもこの思いは持ち続けてはいけない、ということは知っています。自分に対するマイナスの思いは持ち続けてはいけない、すぐにでも手放さなければならない、ということは分かっています。それは『The Secret』という本が教えてくれました。なので今ではあまりに否定的なことは考えないようにしています。

 

かといってイヤなことを言う人がいなくなるわけではありません。社会生活を送っている限り、そういう人はどこかしらにいます。私は今年、職場が変わりましたが、以前と同じように、イヤなことを言う人はやっぱりここにもいました。おそらく世の中にはある一定数、そのタイプの人がいるのでしょう。

 

 

頭に来る一言を言われたらどうするか

 

実を言うと、この本は数年前に買ったものです。冒頭の文章はその時の思いを再現したものですが、今回、思うところあって再び手にしてみました。数年たっても、以前と状況は変わっていないということですね、残念ですが。

 

あらためて読んでみると、『他人にイヤなことを言われて頭に来ても何も言い返せないような人たちを救いたい』という著者の思いが伝わってきました。きましたが、具体的な内容となると、うーん、それって実際できるかなァ?と疑問を感じるところもありました。例えば冒頭に出てくるここ。

 

『迎撃フレーズ』を持つ

 

要は腹の立つことを言われた時に言い返す言葉のストックを持っておこう、というものです。言われた瞬間にいろいろ考えなくても済むようにあらかじめ準備しておこうというものです。そんなことまで考えて提案してくれることに頭が下がります。少しだけ引用させていただきます。

 

『あいかわらず空気読まないね~』

『そういう浅はかなダメ出し、バカっぽいよ』

『そういう物言いはどうかと思うのですが』

『あなた、何様ですか?』

 

口調が違うのは相手によって言い方を変えているからなのですが、確かにこんなことが言えればすっきりするでしょう。『そういう浅はかなダメ出し、バカっぽいよ』―――言えたらいいですよね。『そういう浅はかなダメ出し、バカっぽいよ』―――うーん、言ってみたい!

 

でも…言えません!

 

そのセリフを口にする自分が想像できない。いや、想像はできても実際に言える気がしない、といった方が正しいでしょうか。

 

なんで言えないの?と言われても…ねえ。

 

それが言えるなら苦労しません、というところでしょうか。言えないから苦しんでいるのです。ストックしてあったら言えるとかそういうことでもないのです。それにこんなこと言っている人、実際見たことないし。

 

『いい人』と言われる人にこれを言えということ自体ムリ!だと思うんですよね。どうでしょう?

 

 

『いい人』から脱却する方法?

 

 

ただ、これ以外は実践できそうなこともたくさんありました。ここで具体的に書くのは控えますが、自分の生活習慣、ふだんの心がけを変えていこうという提言です。それによって少しずつ『いい人』から脱却しようというものです。

 

また、提言だけではなく、『いい人』と言われるタイプの痛いところを突く内容も随所にありました。例えばここ。

 

”社交ベタのただのいい人の場合、人畜無害で人当たりはよさそうだが、実は自分のことしか考えられない人が多い。自分がどう思われるかばかりを気にして、相手を楽しませるための工夫がない”

 

うわー、と思いました。言われてみればまさにその通りです。

 

自分のことしか考えられない

自分がどう思われるかばかりを気にして

相手を楽しませるための工夫がない

 

…参りました。こう言われたらぐうの音も出ません。これは100%私のことです。

 

恥ずかしながらそんなこと、考えたこともありませんでした。それに気づかせてくれただけでもこの本は価値があると思いました。

 

最後にもう一つ。

 

”もっと自分からつながりを広げる人になったほうが人生は断然楽しい”

 

これを読んで、著者の方はまるで私の性格、ものの考え方、日常の生活ぶりを知っているかのように感じました。だってこんなに的確に私自身の課題を言い当てられるんですから。これはまさに私が48年生きてきて、自分に足りないと感じていることです。何に関しても基本受け身。受動的。私には著者の方が、その行動パターンが『いい人』であることにつながるんだよ、と言っているように感じました。だからそのパターンを変えようと。

 

『いい人』であることをやめるには、内面からというよりは、むしろ外面――外見も含めた――から、つまり自分自身の行動を変えていくことから始まるのかもしれません。

 

 

もう「いい人」になるのはやめなさい!

潮凪 洋介 KADOKAWA/中経出版 2010-10-29
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