歯並びを治したいけど歯列矯正をする決心がつかない。
そんなふうにずっと悩んでいませんか?
その理由はお金だったり、時間だったり、あるいは矯正したら顔の形が変形してしまうのではないか?という不安だったり。なかなか決心がつきませんよね。
その気持ちすごくよく分かります。
なぜなら20年前の僕もすごく悩んだから。理由はまた違うことなんだけど。
でも先に言っておきます。
悩んでいるならやったほうがいい。
でないとこれからずっと歯並びを気にして生きることになる。それよりその悩みを根本から断ち切って別のことに力を向けたほうがいい。
これが20年前、悩みに悩んで歯列矯正をするにいたった僕の結論です。
目次
歯列矯正にあたっていちばん悩んだこと
あれは20代の半ば、確か26歳のときだったと思います。仕事を始めて3,4年がたち、ある程度まとまったお金ができたのを機に、かねてから考えていた歯の矯正に踏み切ることにしました。
行ったのは勤務先の近くにあった矯正歯科。
そのカウンセリングでまったく予期していなかったことを言われました。
矯正をするには上の歯2本、下の歯2本を抜かなければならない。
マジか…!!
仰天しました。
当時はインターネットもなく、下調べもできず、大した予備知識もなく臨んだのですが、まさかそんなことになるとは思いもよらず、大きな衝撃を受けました。
大げさではありません。衝撃です。
だって歯を4本抜くんですよ?それも虫歯でもなんでもない健康な歯を。
ありえない、と思いました。そんなことしなきゃいけないんなら…やめよう。
コンプレックスからどうしても矯正をやりたかった
あまりの驚きから最初はやめようと思ったものの、日がたつにつれて次第にその決心も揺らいできました。
だってこれまで何年も歯並びで悩んできたのですから。
僕はもともと自分の身体のあちこちにコンプレックスを感じており、歯並びもその一つでした。ずっと治したいと思っていた。
当時の歯並び
ちなみにその当時の歯の状況です。
- 上の前歯4本が乱ぐい歯状態
- うち真ん中の2本が前に突き出ている(特に右側)
- そのせいもあって口が閉じにくい
- ただし下の歯並びは問題なし
- 奥歯のかみ合わせも問題なし
俗に言う「出っ歯」「乱ぐい歯」です。
人に面と向かって言われたことはなかったと思いますが、でも僕は気になってしょうがなかった。コンプレックスとはそういうものでしょう。歯並びのきれいな人を見ては内心うらやみ、自分の歯並びの悪さにずっと引け目を感じていたのです。
だからやっぱり治したかった。
矯正のために歯を抜くことを決心
でもそのためには健康な歯を抜かなくてはならない。それも4本も。
そこまでする必要があるのか?そこまでして治すべきものなのか?
別に人から指摘されているわけでもない。生活に支障があるわけでもない。
ただ自分が気にしているだけ。
だったらそんなこと気にしないくらいに強くなればいいんじゃないか。強い心をもてばいいんじゃないか。それで済む話じゃないか。
そのために大金を払い、そして虫歯でもなんでもない健康そのものの歯を4本も抜く必要が果たしてあるのか?
めちゃめちゃ悩みました。
冷静に、客観的に考えれば、そんな必要ないでしょう。
でも残念ながらコンプレックスというのは客観的に考えられるものではないのです。
強い心を持てなかったからここまで悩んでいるのです。そんな心があったら初めから悩んでなんかいません。
治さない限りはずっと歯並びを気にして生きていくことになるとそのときの僕は思いました。
そんな生き方をするくらいならやっぱり治したい!!
最終的にはその気持ちが勝り、僕は矯正に踏み切ることにしました。
歯科医で抜歯
ちなみに抜歯は矯正歯科では行いません。紹介された一般の歯科で抜いてもらいます。(※これは僕が通った矯正歯科での場合なので違うところもあるかもしれません)
初めてその歯科の前に立ったとき、身体が震えたことを思い出します。
生まれて初めて歯を抜く恐怖、それもまったく何の問題もなくしっかりと生えている歯を引っこ抜くということにものすごい恐怖を感じました。なんだかバチが当たりそうな気がしました。
やめるならここしかない、という考えもフッと湧きましたが、そのままドアを開けました。
4本の歯を前に誓ったこと
訪れたときの気持ちは覚えているのですが、その後の記憶はあいまいです。
まとめて4本ではなく、2本ずつ抜歯しました(あるいは1本ずつだったかもしれません)。
ちなみに抜いたのは犬歯です。前の4本の歯の両隣ですね。とても頑丈に生えていたこの歯を上2本、下2本と2回に分けて抜いたわけです。
けっこう出血したことを覚えています。
痛む口を手で押さえながら、これでもう後戻りはできないと感じました。
何日かかけてすべての抜歯が終わったとき、僕の元には4つの歯が残されました(抜歯後に渡されました)。つい先日まで口の中にあった歯です。虫歯も何もない健康な歯。それがコロンと転がっている。
その歯を前にして思いました。
絶対に成功してやる。
成功というのは矯正の成功のことじゃありません。
人生の成功です。
絶対に何かを成し遂げてやるという熱い気持ちでいっぱいになったのです。それが何でもないのに抜かれてしまった4本の歯への義理であるように感じました。今聞くとお笑いぐさですがそんな誓いを立てずにはいられなかったのです。
歯列矯正の治療について
いよいよここから肝心の歯列矯正の話に移っていくわけですが、抜歯の話もそうでしたが、何しろ20年前なので記憶があいまいです。忘れていることも多い。
なのでここでは当時の自分が感じたこと、そしてまわりの人と接するなかで覚えているシーンを中心にお伝えします。
歯型をとる
最初に石こうのようなもので歯型をとりました。粘土みたいなものを口の中に入れて固まったら取り出す。
装置をつける
ここで短期間、何らかの装置のようなものをつけた記憶があります。
それ自体はそんなに痛くなかったので「なんだ、痛いと聞いていたわりに痛くないじゃん」と思ったことを覚えています。
でも本当に痛いのはこのあとでした。
ブラケット装着
これがブラケットです。僕がつけたのは、
- 透明のクリアタイプ
- 歯の表側に装着
今でこそ歯列矯正のブラケットは透明なものが主流ですが、当時はいかにも矯正してます風の銀色のタイプが多かった。でもその矯正歯科では透明なタイプも選べたので迷わずそちらにしました。
ただし、取りつけは歯の表側です。裏側は料金が高かった。なので表側にしました。
最初に歯の一つ一つに部品を接着し、それが完全に乾いてからワイヤーを通します。
歯列矯正のつらい点
矯正中どういうことが起こるかということは知っておいて損はないので覚えている範囲で伝えておきます。ちょっと覚悟して聞いてくださいね。
1.痛み
なんといってもこれです。決して脅かすわけではないですが控えめに言って、
めちゃめちゃ痛い!!!
いや、ずっとじゃないですよ?ずっとじゃないです。でも最初にそういう時期があります。ひょっとしたら今は技術が進化してそんなことないのかもしれないど、でも僕のときはそうだった。
どういうときに痛むのか?なぜ痛むのか?
一般的な歯列矯正の場合、歯につけた部品のすべてにワイヤーを通しそれを締めあげます。そうして歯に力を加え、抜歯して空間になったところにずらしていくわけですね。だから歯がちょっとした刺激で非常な痛みを感じる。
ひと言でいうと、
メシが食えない!!!
たとえば上下の歯が、
コツン
と当たるだけで
ウゴッ、ガッ…!!!
と身動きが取れなくなるほどの痛みに襲われます。
だからご飯を食べるときは大変。
食べるときは当然噛みますよね?噛まないと食べられませんから。でも、
噛むと猛烈な痛みに襲われます。
固いものは食べられませんからできるだけ柔らかいものを選んで口に入れるのですがそれでもダメ。
一口噛むごとに
ウガッ…!!
と固まります。
ごはんつぶがあんなに固いものだとは初めて知りました。ごはんがかめない。
そして口を閉じると歯が当たるので常に半開き、よだれを垂らしそうになりながら泣きながら食べました。
この状態が数日続きます。
会社でも連れ立って食事に行くことがありましたが、泣きながら食べている僕はいい物笑いの種になりました(でもこの時はいい人ばかりだからよかった!)。
2.手間がかかる
ブラケットをつけていると痛いことにくわえ厄介なことがもうひとつあります。それは、
食べたものがはさまりまくること。
僕も今では50歳前、歯の隙間がふえてきたので食べたものがはさまるめんどくささは感じますが、矯正中はこの比ではありません。トウモロコシにかぶりついたときをはるかに超える量が歯とブラケットの間にはさまりまくります。
歯の表側に装着しているからそのまま笑うとヒドイことに。
100年の恋も一瞬で冷めるでしょう。
だからこれをいちいち取らなきゃならない。
舌だけでは取りきれませんからつまようじ必須です。
これを毎食後くり返します。
3.吸血鬼になる
意味分かりませんね?実はこういうことです。
ある日、会社の人たちと一緒のときにたまたまグレープジュースを飲みました。
ひと口ふた口飲んでから話の際に笑ったときです。
「おいマドギワ(僕のことです)、お前、歯が…!」
先輩が半分驚き、半分笑いながら指さすので鏡で見てみたら
歯が紫色になっている!!
そうです、ブラケットにグレープの色が付着してしまったのです。すべての歯に装着していますからニッと笑ったその姿は吸血鬼。
慌ててうがいをしたり指でこすったりして落としました。取れなくなることはありませんが泡食いました。
でもそういえば矯正歯科の先生からも
カレーはダメ
と言われていたのを思い出しました。カレーは色素がついて歯が黄色になってしまうからできればあまり食べないほうがいいと。カレー好きなのでつらかった。
でもジュースはまったくノーマークだったのでこんなことになってしまったわけです。
4.口の中の違和感
年単位でつけるのでいずれは慣れるといってもうざったいです。口の中がいつもガチャガチャしている感じ。奥歯のほうは金具が触れるところはいつも荒れてました。
食べたあとはもちろん、普段から舌先で装置をいじるようなクセがついてしまいます。
5.人目は気にならない
あとよく言われる人目が気になるというものですがこれは実際はほとんど気になりません。歯の表側でやった僕が言うのですから間違いなし。営業マンでしたが仕事にもまったく支障なし。
歯並びが悪くて気にしているのと、矯正器具をつけて気にしているのではその中味が全然違います。前者はどうしても内向きになりがちですが後者はそんなことありません。「治しているんです!」と堂々としていればいいんです。女性もぜんぜん気にする必要なし!
6.お金がかかる
最後に書きましたが当然この問題は大きいですね。僕の場合も80万円くらいかかりました。数回に分けて支払いました。当時は景気がよかったからまだよかった。
とはいっても独身だったからできたようなもので、そうでなかったらできなかったでしょう。結婚してからじゃ難しそう。
そう考えるとできるときにやったほうがいい。お金があるなら。タイミングを逃すとやりたくてもできなくなってしまいますよ。
歯列矯正終了!
正確な期間は覚えてないですが約2年後、晴れてブラケットを取りはずすことになりました。
取れたときのことは今でもよく覚えています。
歯並びがよくなったのはもちろんですが、最初それ以上にうれしかったのは、
口の中がツルツルになったこと。
正確には口の中じゃなくて歯が、ですね。それまでず~っとくっついていた装置がすべて取れたのです。舌で触ってみると歯がツルツル。余計なものはもう何もついていません。口の中が広くなったように感じました。
うれしくて思わず飛び上がりたい気持ちになりました。
それから家に帰る途中、駅の鏡でそっと自分の顔を映してみました。歯並びは、
きれいです!
ちゃんと横に並んでいる!
家に帰ってからも何度も鏡をのぞきこみました。
ブラケットを外した直後と20年後の歯の様子
ただ実は治療はこれで終わりではありません。
歯列矯正はブラケットを外した後も「リテーナー」という保定装置をつけておく必要があります。要は歯列が安定するまでキープするためのものです。これは自分で取り外しができます。
リテーナーには2タイプあり、
- プレートタイプ
→ワイヤーとプラスチックを組み合わせたもの - マウスピースタイプ
→透明な樹脂でできたその名のとおりマウスピースの形
僕の場合は、上の歯がマウスピースタイプ、下の歯がプレートタイプでした。
最初の頃はほぼ1日中つけます。食事のときだけ外す。これが1年くらい続いたでしょうか?
その後、寝るときだけ装着するようになり、これを一昨年くらいまで――考えてみればとても長い期間です――続けていました。
注意!歯は動こうとする
使っている時もそうだったのですが、3日くらいつけないでいたあとリテーナーをつけようとするといつも固くなっているのです。3日つけないだけでも歯が動いてリテーナーの位置とずれてしまう。それくらい強い力で歯は元の位置に戻ろうとします。
でも10年以上つけている間にリテーナーもボロボロになり、最後の方はカビまで生えてきたのでとうとうやめてしまいました。
で、これを書いている今は歯列矯正をしてから20年になります。一昨年からリテーナーを外した結果、予想通り、少し歯が戻ってきています。矯正直後はきれいに横に並んでいた歯がまた昔のように重なりだしている。
これは非常にショッキングなことですよね。戻るんかい!!みたいな。あんだけ時間とお金かけて!?
ただ、僕もあれから年をとり、来年で50歳なのであまり悲観はしていません。これからも少しずつ戻るのかもしれないけど、そんなに急には戻らないだろうし、もし完全に元通りになったとしてもその頃にはおそらく還暦とか。もう誰も見ちゃいないでしょう。
なので長いスパンで考えると――その後のケアによっては――歯列矯正をしてもひょっとしたら将来的には戻る可能性もある、ということは知っておいたほうがいいでしょう。
歯列矯正を迷っているあなたへ
上の「戻るかもしれない」の話はあえて書きました。でもそれをふまえた上でお話します。
歯列矯正をするかしまいか迷っているあなたへ。
やりたい気持ちがあるのならやったほうがいい。
歯並びがどんなに悪かろうが気にしない人は気にしないわけですよね?
でもあなたは気になる。
気になって歯列矯正をしたいと思っている。あるいはしようかどうか迷っている。
その時点で答えは出ています。なぜなら、
この悩みのゴールは「歯列矯正する」にしかないから。
ゴールにたどりつかないかぎり、行動に移さないかぎり、これから先ずっと悩むことになります。
それなら早いとこやってしまったほうがいい。
――と言いながらここで再び水を差すようなことを言ってしまうのですが、
歯列矯正が終わった僕に対してほどんどの人が好意的なコメントをしてくれました。「マドギワはほんとに歯並びがきれいになった」「やってよかったな」そんなことを言ってくれることを嬉しく思いました。
ただ、ひとりだけ。「前より歯ぐきが目立つようになった」
これは当時の仲のいい友人の1人でした。もともと口が悪い奴なんですが、その時はさすがにテンションが下がりました。なるほど、そういうふうに見えるのかって。100%いいことばかりじゃないんだなって。
でも実を言うとそいつも歯並びは悪いのです。何か思うところがあったのかもしれません。でもそう見えることは事実だったのでしょう。
でも、
そんなふうに、たとえ100%いいことばかりじゃないんだとしても、そして20年後に歯が元に戻ろうとしているとしても、僕は言い切ることができます。
歯列矯正をしたことを1㎜も後悔していません。
やってよかった。
やったからこそ悩みに終止符を打つことができた。
あの時やらなかったらそのあともずっと歯並びのことで悩んでいたに違いありません。ずっとそこで立ち止まっていたに違いない。
そんなのは時間と心の無駄です。
だからやりたいと思うのならさっさとやったほうがいい。
それが20年前に歯列矯正をした僕から、今、迷っているあなたに伝えられることです。
病院選びは慎重に
これは大事です。歯列矯正について調べると、なかにはあまりよくない対応をする矯正歯科もあるようです。年単位で通うことになるので慎重の上にも慎重を期して選んでください。いくつか比べてみることも必要かと思います。
ネットで「矯正歯科 選び方」で調べてチェック項目を確認したうえで選ぶことをおすすめします。
読んでもらってお分かりのとおり、歯列矯正は長期の計画になります。痛いことや面倒なことも多い。
でもそれが終わったら思いきり笑えるようになります。大げさな話、世界がちょっと明るくなる。そこを目指してはじめの一歩をぜひ踏み出してみてください!